評価について
A…これは凄い。これを見ないと一生後悔する。古典としてたたえる価値あり。
B…そこそこよく出来ている。払った銭に対する見返りとしては十分。見て損無し。
C…積極的にお勧めはしないがさりとて全面的に否定もしない。お好みに応じて見ていただくのがよかろう。
D…銭返せ!他の事に時間を使ったほうがよい。
E…存在する事自体問題。あまりにもひどすぎる。こんな物を作ったやつは粛清すべき。
本当はもう少しほとぼりが冷めて空いてきた頃に見ようと思ったのだが急に気が変わり見てみました。いや、正直なところある程度予測はついていたんですよ。本編よりミニパトのほうが面白いだろうというのは。ただねー、やっぱり目の当たりにすると辛いですよ。パトレイバーの2本目の映画あたりは文句無くAを与えたいような作品だった事を考えれば今回の衝撃は大きかった。
まずは良い所から書こうかと思ったが余り無いんだよねー。キャストがFクラス(ファースト)だったことかねぇ。「積木くずし」の著者、穂積隆信氏が出ているのがすごい。「大草原の小さな家」のベーカー先生としてすっかりお茶の間でもおなじみだったが、やはり凄い人です。主演の平田広明氏はああいう役がよく似合う人で。というかわしが見た事がある氏の役柄が全部あの手の若い2枚目の主役級なんですよ。「ER」のカーターもそうだし、以前飛行機の中で見た、あれはなんて言ったかしらん、ダメ弁護士についてしまった若い弁護士が傾きかけた法律事務所を建て直す映画の若い弁護士とか。むしろ「最遊記」なんかはワシにとっては例外的ですわ。まぁそれはいいんですが、とにかくキャストは素晴らしかった。あと、気象通報を本職のラジオたんぱのアナウンサーが読んでいるあたりもさすが。音楽を極力少なくしたのも良い判断だったとおもう。
話全体としては最近流れているあかほりエロ小説のCM風に言うなら「パラサイトイブ」に怪獣映画を足して軽くレイバーをまぶしたような感じですな。そうそう、話はそれるが、昔KRの「ファンタジーワールド」でやっていた「パラサイトイブ」のドラマ、榊原さんのイブが凄かったですなぁ。おじさんじゅんとしてしまいましたよ。あんなイブならおじさんもうどうなっても良い。いや、それはどうでもいいんですが、とにかく「パトレイバー」と名前はついているが実はパトレイバーは最後の20分くらいしか出てこず、それどころかレイバー一般もほとんど出てこない。出てきても怪獣に襲われて破壊された残骸だけだったりする。ゆうき御大が「最初に動いているレイバーを出して欲しかった」とお嘆きなのも納得です。特車二課が出てくるとか出てこないとかそんな次元ではなく、レイバーというものがおおよそほとんど出てこないのでは観客も困ってしまうでしょう。テレビのようにオープニングでレイバーについて親切に説明してくれるわけでもなく、レイバーといわれても現物が出てくるわけでもない。ようやっと出てきても今までのような建設用の人型のものではなく、海底探査用の、言ってみれば「しんかい6500」みたいなやつが出てくるだけ。これじゃあ別に「パトレイバー」という名前である必要もない気がする。
そもそもメロドラマを話の中心に据えてしまった事で今までの映画のような押しつぶすような緊張感は望むべくもなくなってしまったのが残念。容疑者とヒロインとが重なっていく過程、そして怪獣の正体がはっきりしていく過程にもっと強力なサスペンスを織り込めば面白かったかもしれないが、どちらの過程もあまりにも淡々と描きすぎ。全体的演出が淡々としているのは結構だがエンタテインメントである以上そういうところにも気をつかうべきだろう。とにかく全体としているのは緊張感が足りないという事。メロドラマにしろ怪獣にしろ、どうも焦点が定まっていない気がする。怪獣の視点から言えば「未知との遭遇」の宇宙人のように得体の知れないものとしてのイメージをもっと強めたあとで正体を現せばショッキング性も強まったろうが、物凄くあっさりと正体を現してしまう。また、単にショッキング性を高めるばかりでなく、ヒロインにそのようなショッキングなものが結びついていく様から効果を得る事も出来たはず。ヒロインについて言えば、これは狙いかもしれないが子供とヒロインをつなぐ線が希薄。父親の影が強すぎてヒロインと子供の間に狂気に近い関係(関係というより思い入れ)があったということがどうも納得いかない。そのように影が薄いにもかかわらず異常な思い込みを持つようになったと言いいたいのかもしれないが、それならその妄想の部分を例の部屋一杯の写真のほかにももう少し別の形で表せばよいのではという気がする。
最後にマニアから一言。
IATA(国際航空輸送連盟)は事故調査はしませんぜ。あそこは運賃やサービスに関する国際的取り決めをするところで、国際的な事故調査をするのはICAO(国際民間航空機構)ですぜ。