S.E.「エ〜ックス」
教習所外観
トモロヲナレーション(以下N)「東京、武蔵野市。ここにある自動車教習所に通う一人の男がいた。男の名は万鈴公路公秀といった。これは、一人のおちこぼれ教習生の、運転免許取得にかけた執念のドラマである。
曲(以下M)C.I.「地上の星」
字幕「第2段階」「違法駐車との戦い」「中央高速 横転の危機」「補助ブレーキの恐怖」「縦列駐車と方向転換」
タイトル「走れファミリア〜運転免許取得にかけた半年〜」
スタジオへ。中央に立つ膳場アナへズーム。
M. F.O.
膳場アナ(以下膳)「プロジェクトX〜挑戦者たち〜、今夜は以前放送してご好評を頂きましたおちこぼれ教習生の運転免許取得までのドラマの後編を御覧頂きます」
教習所仕様のファミリアで国井アナ(以下国)登場。
国「これが今回のドラマに出てくるファミリアの教習所仕様です」
国、降りて助手席のドアを開ける。
国「こちらに教官用のアクセル、クラッチ、そして俗に言う補助ブレーキがついているわけですね。検定中はこれを踏まれた瞬間に試験が終ってしまいます。路上に出た後は全部で19時間の間にこれを1回も踏まれること無く、ハンドルを取られる事も無いようにならなければならないわけです」
膳「今回のドラマは仮免許取得の直後、平成13年の12月から始まります」
教習所のコース
N「平成13年、12月、一人の男が際どい所で仮免許試験に合格した。万鈴公路公秀、22歳。教習所に入ってから3ヶ月目での合格だった」
ファミリアの車内。ハンドルやシフトレバー、インパネなどのアップの組み合わせ。
N「万鈴公路には、車の運転上不利な性格的特徴があった。それは、応用がきかず、神経質ということであった」
適性検査の一部。
ヴォイスオーバー(字幕 声:担当した教官)「ある状況に対して何か教えると、あらゆる事にそれを当てはめようとするんですよ。基本事項から自分で判断して応用をするのが苦手だったみたいでしたね」
N「教習中、同乗者が肝を冷やす事も多かった」
再現V。車内、路上。
N「右折のため、車線変更をしようとすると、後続のトラックが同時に車線変更の合図を出した」
インタビュー画面(字幕:万鈴公路公秀)「ルームミラーから目を離そうかと思ったときに合図が出たんですね。後続車が針路変更しようとしているならこちらもやめなくてはならない。で、そのままミラーを見続けてしまったわけですよ」
再現V。
N「教官が声にならない声を上げてハンドルを取った。車は、カーブにさしかかって、中央分離帯に突っ込もうとしていた。この時点で、卒業検定まで数時間を残すだけであった」
スタジオ。
膳「(教習所の教程、試験のシステム等について説明)」
国「それでですね、今ここに先ほどVTRの中に出てきました適性検査の結果があるんですが…」
膳「はい。一部抜粋してみます。『もの静かで無口な方です。しかし心のそ底にしっかりとした堅さを持っています。他人に気を使いすぎる欠点はありますが、決心した事は、やりとおす意志の強さがあります。ただあまりにもきちんと考えすぎて自分の考えに束縛される傾向があります。普通の人より心配したり悩んだりすることが多い方です。くよくよ考えすぎて事故にならないようにしてください。注意力に多少の問題があります.運転の際は細かいところまで十分気を配るよう注意してください。環境の変化についていくのがやや遅いようです。天候の急変など交通環境が変わったときには特に注意してください』」
国「確かに、さっきのVTRにもありましたが、一点に気を取られたりすると危ない事も多そうですねぇ」
膳「この適性検査にかかれている危惧が現実のものとなったのは高速教習でのことでした。続きを御覧ください」
N「年が明けて平成14年、1月。万鈴公路は高速教習を受けようとしていた」
再現V。朝の混んでいる路上。車内。
ヴォイスオーバー(万鈴公路)「あの日は最初から何かにつけタイミングが合わなかったんですよ。いつもそうなんですけど、交差点のところとか、駐車禁止のところに止まっている車をよけるのに、うまくタイミングが取れない。近づきすぎて教官にいやみを言われたり、対向車との行き違いのタイミングが狂って補助ブレーキを踏まれたりすると」
N「一般道での万鈴公路の運転の順番は最初であった。高速では最後の3番目であった」
再現V。車道のない片側一車線道路。横を自転車が走っていて前方に駐車車両。反対車線は大量の車。
N「なれない道と、朝の交通量が負担となって万鈴公路にのしかかった」
ヴォイスオーバー(万鈴公路)「下を走る段階で大分疲れましたね。そのあと、順番が来るまでの間、一寸は休んで気分転換できるかと思ったんですけどね」
再現V。中央道。
N「いよいよ万鈴公路の番がきた。中央道の八王子から調布までのコースであった。交通量は多くも少なくもなかった。このとき、万鈴公路はすでに精神的に限界に達していた」
ヴォイスオーバー(万鈴公路)「この日の教官がイヤミな感じの男でね。何一つ誉めるという事が無い。失敗を指摘する時にだるそうに、そのくせ笑顔で言うんですよ。もう高速に乗るまでに何回かそれをやられた上に、朝6時半に起きたものだから疲れていたんですよね」
N「教官に2度止められたあと、追越をする事になった。追い越し車線に入ると、走行車線はトラックや軽自動車がつながっていて戻る事ができなかった。車は高架の上の緩い右カーブにかかった。車が徐々に右に寄り始めた。ハンドルが深すぎる。見る見る中央のガードレールが迫った。ハンドルを徐々に戻すがほとんど反応は無い。教官がハンドルを取った。速度は、時速百キロを超えていた」
S.E.「プロジェクトエ〜ックス」
スタジオ。
膳「スタジオにゲストの方をお招きしています。今回のドラマの主人公、万鈴公路公秀さんご本人にスタジオにおこしいただきました」
M:登場の曲。
万鈴公路(以下万)登場。三人、座ってから
国「万鈴公路さん、高速道路で、中央分離帯に突っ込みそうになったとき、どんな事をお考えでした?」
万「いや、このままだと当たる当たると思うんですが、自分の前に乗った二人が120キロくらい出ているところで急ハンドルを切ったものだから、それが怖くて思い切ってまわせない。行ってはいけないいけないと思うほどどんどん壁に吸い寄せられていく。あの時は怖かったですね」
膳「それでそのときに教官はなんと…?」
万「この速度で当たったら間違いなく横転すると。いや、こっちだってそれはわかっているんですが、思うようにならなかったわけで」
(適度な間)
膳「この教習から数回を経ていよいよ卒業検定を受ける事になります。それまでの様子です」
再現V 調布の出口から出た甲州街道。
N「高速から出てもまだ終ったわけではなかった。出口の先の幹線道路を大型トラックに囲まれるように走っていった。車両通行帯は狭く、前はミキサー車にふさがれて見えなかった。万鈴公路のストレスは高まる一方であった。幹線道路から出て、北へ向かう道へと右折しようと交差点の中央から動き出した時、補助ブレーキが踏まれた。教官は、後ろの席に乗る二人の同乗者に向かって言った。『普通あのタイミングで行くか?』」
インタビュー画面
万「アレは悔しかった。そんな言いかたはないだろうと。やる気がなくなりましたね。もうそのあと一寸して交代してからの事はよく覚えていないですね。そのぐらい疲れきっていたんで。
再現V 所内での縦列駐車
N「それから数時間。なんとか運転が形になってきたころ、とうとう検定の時期がやってきた。直前の見極めでも路上は問題なく、縦列駐車も良好であった。だが、方向転換は右バックと左バックの2つのうち、右バックは時間が足りず、練習が出来ないまま本番を迎えた」
再現V:検定中の標識を載せたファミリア。
車内。採点表を広げている教官の膝元。
万鈴公路の乗車順は3番目、最後であった。このとき、万鈴公路は不思議と全く緊張しなかった。
ヴォイスオーバー(万)「試験だと思わなければいい。要するに踏まれないで、ハンドルを取られないで最後までいければそれでいいんだと、そう思ったら全然緊張しなかった。(笑)いや、本当に、自分でもそれはびっくりしましたね。本当に」
N「路上はほとんど完璧な出来栄えであった。所内に戻って、方向転換の試験が行われた。右バックであった」
再現V。右バックでの方向転換。
N「万鈴公路の番がきた。1ヶ月以上やっていなかった右バックではあったが、万鈴公路には自信があった」
ヴォイスオーバー(万)「最初の誘導で左の前がずいぶん開いているなという気はしましたね。それでも今までに一度も右バックは失敗した事が無かったですし、外輪差に注意するならいいだろうと思ってそのままやったんです」
N「車は徐々に後退し始めた。45度ほどの角度がついたところで後ろのポールを見ようと万鈴公路が目を上げたとき、鈍い衝撃があった。脱輪であった。右後輪が縁石を踏み越えていた。試験は、中止された。一発不合格であった」
S.E.「プロジェクトエ〜ックス」
スタジオ。
国「試験に失敗してしまったわけですが…」
万「しまったと思いましたね。まさかそんなことが、と」
膳「路上の方は補助ブレーキも無くハンドルも取られなかったのに所内で…」
万「実際、後で成績を聞くと路上は左折の時に信号の数を勘違いして最初から第2通行帯に入ってしまったのが減点された他はパーフェクトだったんですね。だから余計悔しかったですね」
国、膳(うなずいて)「あー」
膳「この後、補修と再試験を受ける事になります。その模様です」
再現V 再び検定中のファミリア。
N「試験に失敗したあとの補修1時間は何事も無く過ぎた。再び検定の日がきた。今度の乗車順は1番であった。その朝、交通量は多かった。あちこちで道路工事が行われていた。対面通行をいくつも通った。路上の試験が終り、所内へ戻ると今回は縦列駐車であった。前日、補修の際の教官の言葉を思い出した。最初の誘導で後ろに下がりすぎている。そのままでは入ったとしても浅くしか入らない。万鈴公路は思い切って今までよりはるかに前で後退を止めた。これまでで最高の縦列駐車であった。試験の結果が発表された。合格であった。入所から半年が経とうとしていた。
S.E.「プロジェクトエ〜ックス」
スタジオ
国「とうとう実技試験に受かりましたね」
万「2回目は1回目と全く逆でしたね。路上が不安で所内はそれこそこれまでの仲で一番うまくいったと思いました。いくつか、あ〜アレは減点だなという所があったので心配でしたが、通りました」
膳「実技試験に受かってもまだ全てが終ったわけではありません。最後の関門、運転免許試験場での最終の学科試験が待っています」
V 府中の試験場の外観。
N「東京、府中市の運転免許試験場。ここで最後の学科試験が行われる。1回の試験で受かるのは全体の半分程度。万鈴公路の学科の成績は決して芳しくなかった。
ヴォイスオーバー(万)「自分で問題集を買ってやると95点、6点取れるんですよ。で、勇んで教習所の効果測定を受けると86点とかだったりする。で、聞くと実際の試験はこんなもんだと言うんですね。いや〜どんなもんだろうと思いました」
再現V 府中試験場の試験室の内部風の無人のセット。
試験が始まった、1問めからつまづいた。効果測定の苦い記憶が蘇った。絵を見て答える危険問題も案の定、問題集のものとは比較にならないほど分かりづらい表現であった。試験は終った.
ヴォイスオーバー(万)はっきり言ってこれは駄目だと。また明日6時過ぎに起きて2000円がとこ払ってやる事になるだろうと。そう思いましたね」
電光掲示板
「結果が発表された。合格者の番号が次々に画面に現れた。そこには万鈴公路の番号も、あった。合格であった」
S.E.「プロジェクトエ〜ックス」
スタジオ
万アップ。
国「とうとう最後の試験も受かって。そのときどんなお気持ちでした?」
万「びっくりしましたね。1度流れた後、もう一度流れるんですが、2度目を見るまで信じられなかったですね。ほっとしました」
万、泣く。
万「6ヶ月間、長かったなぁって。始めた頃は本当にできるんだろうかっていう位だったのが、とうとうやりきったなと思うと、本当に嬉しかったあとで免許をもらったあと、番号から点数が分かるんですが、それを見たら90点だったんですね。合格点が90点なので、またボーダーライン合格だ、と(笑)」
万、鼻すする。
膳「こちらにそのとき交付された免許証をお借りしてあるんですが…いい顔で写ってらっしゃいますね」
国「あー、本当だ。大体こういうのは凄い顔で写るものなんですが、嬉しそうな表情ですねぇ」
万(涙を拭きながら)「晴れ晴れとした気分でしたね。人間やって出来ない事は無いと。そんな気がしましたね」
M「ヘッドライト・テールライト」F.I.
膳「この後、エンディングの物語が続きます」
N「免許証が交付されたのは、万鈴公路さんの誕生日の翌日であった」
車に初心者マークを張る万。
万「いや、本当にいつになったら家の車に乗れるのかと思ってましたから、なんか、夢見たいでねぇ」
万、乗り込んでエンジンを回す。
N「万鈴公路さんは今、23歳になった。車を運転するようになったお陰でこれまで無かった運動のカンも養われたという。おちこぼれ教習生としての日々は万鈴公路さんに運転技術以上の物を残したのである」
車、車庫から出ようとする。がりっという音。車が止まって万、降りてきて傷を見て悶絶する。
引いてロングになってエンディングクレジットとエンドタイトル。
次回予告
M:「地上の星」
「忍耐力との戦い。延々と続く戦闘パートとの耐久戦。次回、プロジェクトXは「8人全員をクリアーせよ〜サクラ大戦2クリアーにかけた男達の熱き戦い〜をお送りします。お楽しみに」