コンベンション「何モ違ウデショ〜」日記

1.

もうずいぶん前の話になるが、去年(02年)11月、その直前の空き巣被害の痛手から立ち直れないままボクはノースハンプトンの駅に降り立ったのであった。

何しにきたかっちゃ話は簡単で土地のヲタク連によるコンベンションっちゅうものさちょいと覗いてみようと思ってな。言ってみりゃおのぼりさんだわな。

今回のイベント、題して「Aya Returns 2002」が執り行われるノースハンプトンというところはロンドンから北へ列車で小一時間ばかりのところにある何の変哲もない町である。ちなみに、半年後に行われる姉妹イベントは、サウスハンプトン(こっちはご存知の方もいるだろう)で行われるから「Minami Con」という非常に安易な(いや、日本人が言うので安易なのであって、彼らにしてみれば非常にカッチョいいネーミングに違いない)名前がついている。さて、列車が駅に着いて降りてみると、それ以前から感じていた「ぼんやりとした不安」が現実のものとなった。いやね、どうも列車内にコスプレの衣装だの小道具だのと思われるものを持った連中や、ポケモンのリュックサック(幼稚園児や小学生が背負っているようなやつね)を背負った人間の姿がちらちらと見えるような気がしていたのだが、これはきっと幻覚に違いないと思って出来るだけ見ないようにしていたのよ。その連中がどっと降りて、一方向へ向かって駅から大行進を開始したわけですよ。うわちゃーってなもんで、これがコンベンションに出る連中に違いないですよ。とりあえずこの連中についていけば現場へは迷わずいけるってんでついって行った先はごく普通のホテルですよ。そこのロビーには、受付がしつらえられていて、既に長蛇の列。それでね、ここに並んでいる連中っつうのが何というか、その筋の人は世界中どこへ行っても同じなんだなという感じのいでたちの皆様で、外はいい加減クソ寒いのに「うる星やつら」のTシャツ(それも着古して思いっきり色あせている)しか着ていない、明らかに適正体重オーバーで髪の毛が大変なことになっている兄ちゃんとか、はやくもコスプレして大興奮のねえちゃんとか、とにかく非常にわかりやすい目印を提供してくれているわけですよ。そして不思議と妙にその一帯が汗臭いんですわ。外はもう上着がないと寒くて風邪を引きそうな陽気で、おまけに風雨ともに強まりつつあるのに、なぜかしっぽりと汗をかいている。おいおい、まだコトは始まってないのにそんなに興奮したらあとあともたないぜよ。ともあれ、しばし並んで、入場券代わりのバッジやら、プログラムやらを受け取っていよいよ魅惑のコンベンションのスタートです。

このコンベンションというのは端的にいうと、ホテルの1フロアーを貸切にして、そこでWinDvixでコピーしまくったり、アメリカ経由で入ってきた日本での同録テープに字幕をつけたものを使ってここ半年くらいの作品を週末三日間とにかくひたすら見まくるコトがメインイベントである。そこにオークションやら物販やらコスプレやらカラオケやらが余興でちらほらと入るというわけだ。今回の作品のラインナップのうち、プログラムに一言コメントとともに紹介されているのは以下のとおり。一部邦題がわからないのでそこはあいまいまたは原文のまま。明らかに邦題がわかるものは若干違っていても(同)とした。

Nurse Witch Kogumi(ナースウィッチ こむぎちゃん マジカルて。パンフレットおよびその他ドキュメントでは全て「Kogumi」となっている)
Juuni Kokki (同)
Princess Tutu
Galaxy Angel U (ギャラクシーエンジエル)
Terrestrial Defence Force Mao-chan(陸上防衛隊まおちゃん)
Pita Ten (同)
Sadamitsu the Destroyer
Chobits (同)
Tenchi GXP (天地無用!GXP)
Hack Sign TV (.hack//sign)
SaiKano(最終兵器彼女) プログラムに書いてある一言コメント「幸せな人々に大地震が!」違うでしょ〜。何も違うでしょ〜。
Slayers (スレイヤーズ 映画版)
Gravitation
Happy Lesson (同)
Full Metal Panic (同)
Initial D Battle Stage (頭文字D)
Azumanga Daioh (同)
Weiss Kreuz (同) これもはごい言い草。「4人のゲイかつ正義の味方である花屋が悪と戦う」
Macross: Do You Remember Love (超時空要塞マクロス 愛、おぼえていますか)
Asagiri no Miko (同)
Hack Sign OVA (.hack//sign ゲームに同梱されていたOVA)
Hummingbirds (同)
G On Riders
Yukikaze (同)
Full Moon Wo Sagashite(同)
Prince of Tennis (同) 一言コメントいわく「確かに彼らはテニスをするが、彼は王子様じゃない」というのだからみもふたもない。
Tenshi no Konamaiki(同)
The Hentai Programme 読んで字の如し。深夜にやる一連の18斤もの。
The Yaoi Programme 再び読んで字の如し。深夜にやるその筋のもの。
Aquarian Age(同) コメントいわく「見たけど何が言いたいのかわからない」
Rahxehon(同) これのコメントがまたひどい。「銃を撃って 物が爆発して 人が死ぬ。いい出来」なんだその小学生みたいなコメントは。
Ai Yori Aoshi(同)
Tokyo Underground(同)
Kanon(同) これもコメントがひどい。いわく「自分の知る限り女子校生は悪と戦わない」
Rizelmine (同)
Witch Hunter Robbin(同)

このほかにも「ほしのこえ」「みるもでポン」「ぱにょぱにょデジキャラット」「攻殻機動隊 Stand Alone Complex」「ナルト」「キディグレイト」「ゲットバッカーズ」「ぷにぷにぽえみぃ」「東京ミュウミュウ」「ラブへな」「トライゼノン」「スパイラル」「種ガン」「学校の怪談」などなど、多数あった。

さて、受付の後、最初の上映が始まるまでの間に宿を探して、戻ってきたところで、何を見るか。まずは古典を見て、飯島真理の歌を聞きますか。しかし、上映会は平穏には続かないのであった。

「愛、おぼえて〜」で半分ほどまで話が進んで、都市の廃墟を発見したあたりで突如けたたましいベルの音が。火災警報である。仕方がない、同室の人間6,7人が皆してぞろぞろと外へ出ると既にホテルの前庭は埋まっていた。天候はますます険悪になり、雨が横殴りでちょっとした台風コントになりかねない。待つことしばし、係りのあんちゃんの「道を空けろ」の絶叫とともに消防車がやってきた。それからどうやらデマだったらしいことがわかるまでのさらに15分ほどの間、ほとんどの参加者は傘もささず、かなり多くの人間がTシャツ1枚で明らかに10度以下の気温の中雨にぬれてちょっとした三善英二気分を味わった。その後、この騒ぎのせいでプログラムが全て30分ずつ押し、結局「愛、おぼえて〜」を見終わると既に飯時だった。この日は前哨戦ということであまり目玉になるものはなかったのと、翌日のことを考え今日はこの一本にしておくことに。が、ここで突然、まさにトワ・エ・モアくらい「ある日突然」、足が痛くなってきた。正確には右足の親指の爪と肉の間が猛烈に痛い。どうも爪の切り方が悪かったらしく、歩いているうちに剥離してきたらしい。普通に歩こうとすると「あああああっ、足が、足が〜、あ〜し〜が〜」と悶絶するほど痛いのでまさにびっこを引きながらかろうじてまだ開いていた薬局で消毒液とバンドエイドを買い、ついでにバーガーキングで夕飯を食ったあと宿へ。そのまま寝る。いよいよ翌土曜日がこのコンベンションの山場である。

2.
翌土曜日は朝から晩まで、それこそ翌日朝4時までイベントがぶっ続けである。昼間は例のごとく大上映会と、物販ブースが開設される。夜はコスプレ大会、オークション、そしてカラオケ大会へと続く。一応、昼間見た作品と、それに対するコメントを書いてみる。ちなみに上映システムについて説明しておくと、全部で5つの上映質室(会議室なんですが)で各々の作品が基本的に1時間ずつ、テレビシリーズで言うと2話ずつ同時に上映されるので、人気のある部屋は大盛況で、そうでもないところは閑古鳥が鳴くという状態が起きる。

朝1発目は「あずまんが」からスタート。もうこれはこちらに来る前に見ていたのだが、当時軽く鬱状態だったので、少しでも気分を軽くしようと思って見る。意外だったのは観客の受けがめちゃくちゃよかったこと。何回か上映されたのだが、いずれも大盛況。そのためいつも後ろのほうから見ていたので字幕が読めなかったが、訳がなかなかうまく出来ていたらしい。時折文化的な部分について訳注が出ていたが、読んでいる暇はあるのだろうか。さすがに大阪の作った「阪神」のぬいぐるみは自分ひとりしか笑わなかったが、その直前の「通天閣」までは笑いが起きていたのでよほどうまく訳したのだろう。上映の合間に「キャラの中で誰が一番好きか」と言う話題になり「ちよちゃん」なんていうありきたりの答えの後、「木村先生とか言ったらイヤだよな」といったやり取り。それを受けて「お父さん」はもっとイヤだという声が上がっていたが、
「甘いのだよ」
と言いたい。お父さん、いいじゃない、お父さん。あの中でお父さんを見ないで何を見るんですか。やはりあの中ではお父さん萌えが基本かと。

2発目は「藍より青し」。
それで一体僕にどうしろと?あきらかに出てくるのが東武東上線だし。しかも昔沿線に住んでたし。ちょっとした橋田ドラマとは言わんけれど、昼ドラの匂いが漂っている気が。客の入りは微妙。

3発目は「最終兵器彼女」。
大入り。話は面白い。ただねぇ、納得いかないのは言葉ね。最初聞いたとき「これは一体どこの話なんじゃろう」と思ってしまいました。北関東か、東北のどこかかと思ったら、こともあろうに北海道だって言うんだよ。北海道の人はそんなしゃべり方しないわ。少なくとも道央の人はそんなしゃべり方はしない。でも、休日に札幌へ出てきて空襲にあうっちゅうんだから、連中が住んでいるのは札幌へ日帰りで、高校生がちょっと出てこられるくらいの場所なのだろう。それにしてはどうかねぇ。それと風景がどう見ても北海道でないわ。行ったことのある方はお分かりだろうが、北海道の住宅地と言うのは独特の雰囲気がある。建物の形や塀の感じが内地とは違うのだが、この作品の中ではどう見ても内地の住宅街と変わらない。まぁ、くさすのはこのくらいにして、内容について一言いうなら、今こういうのを見るとやだねぇ。世の中いつ本当に札幌が消滅するかわかったもんじゃないじゃないですか。

4発目は「スパイラル」。
結構にぎわってました。ふ〜ん、推理ものですか。ただどうもピンとこないのよね。これもそうだが個人的には「コナン」も「金田一少年」も、あの手の推理ものはそんなに面白いと思わんのよ。やはり30分では無理があるのでは?視聴者が与えられる情報と探偵が与えられる情報に差がある上に、「ジェシカおばさんの事件簿」や「ポアロ」、そして或る程度は「ホームズ」に見られるように誰かのちょっとした一言が犯人を明かすと言う感じではないじゃないですか。この辺の番組では集中して見ていると、「あっ、こいつが犯人か」ということをそれこそ推理できるのだが、アニメの推理ものはいくら注意してみても駄目で、残された証拠を無理やり線でつなげるとなるほどそうなると言う感じの謎解きが多い気がするのよね。

5発目は「フルメタル・パニック!」
大盛況。おととしの件の出来事のせいで放送が延期されたと言ううわさだったので楽しみだったのだが、いざ見てみると、まぁ一応ね。伸ばしたほうが無難かと。ただそこまで神経質にならんでもという気も。K王線沿線が出てきまくりですな。本線では国領とか、布田とか。井の頭線では井の頭公園とか。そういえば「あずまんが」でも吉祥寺や井の頭公園が激しく出てましたな。

6発目は「ガンダムシード」
これは満員御礼。立ち席、通路の座り席までみっちり。
ここで1、2話を見た段階では「まぁいいんじゃないんですか」という雰囲気だったが、この間クニへ帰って見てみたらなんか大変なことに。一体何が?そしてうわさの殴ってやりたい女ちゅうのは一体?そしてあの目の大きさは一体?それにしても、今回は全体に「琴乃大当たりの巻」ですな。大躍進じゃないですか。あ、ここにも出てる、あそこにも出てるってね。

上映の合間に物販ブースをのぞいて見ました。いやーすごいねぇ。CDとか、あまりにも古くて逆に貴重なんじゃないかというものが結構あります。そして値段が高い。どんなCDでも、いや、誇張なく、それこそ日本なら中古屋でワゴンに入っていそうなものでも30ポンド(約¥6000)は下らない。逆にDVDはやたらと安くて、正規の英語版は20ポンド以下がざら。せっかく来たので何か買おうと思い英語版「ニュータイプ」を買う。「果てしない物語」とかが英語になっているかと思いきや内容は全然違いますわ。ただ情報自体はほとんど時差がない。これが本格的に流通しだしたら「Animerica」のような地元紙はひとたまりもないでしょう。ちなみにお値段は9.95ドルというのだから結構なものです。裏表紙に「ほたるの墓」のDVDの広告が出ていたのは狙いだろうか。今だからこそアメリカの皆様にはぜひ見ていただきたい。

上映がひと段落するといよいよ夜のお楽しみ、パーテーですよ、パーテー。このパーテーがただものではなかった。これを見られただけで高い金(交通費、食費、宿泊費と会費、しめて100ポンド近く)を払った甲斐があった。

3.
パーテーといっても、ホテルの大広間で役員の挨拶だのコスプレコンテストだのをやるというもので、立食パーテーのようなものではない。コスプレコンテストは女装率高し。非常にゴツいあんさんがちぃの格好をしたりしている。そして寸劇も多し。「弁士」が一人ついて、要所要所でせりふの書いてある厚紙を掲げるのですよ。本当は写真があると一番よいのだが、件の事件でカメラをなくしているのでいかんともしがたい。

次にやってきたのがチャリティオークション。これがすごかった。
主だったところをあげると
ちぃの耳セット:25ポンドで落札。
CCさくらステッキセット:35ポンドで落札。
第3東京市立第壱中学校コスプレ:250ポンドで落札。
などなど。だが、最後に出た「ラブへな等身大抱き枕」。さぁ、これは一体いくらか。
400ポンド也。

目が点ですよ。ちなみにこれにプラスアルファすれば正月に日本へ行く往復航空券が買えます。後になって「寄せ書きをしてくれ」というのでこの枕が回ってきたのでその旨を書いてあげようかと思ったのだが、その事実を知ったときの落札者の衝撃を考えて自粛。後で漏れ聞いたところでは出品したスタッフ自身も驚きあきれておった。

パーテーがはねると今度はカラオケ大会だそうな。カラオケったって、この国にはセガカラがあるわけでもないので、いったいどうするのか興味津々である。再び大広間で行うのだが、準備があるからと言うので全員外に出されて待つこと数十分。その間も群集は盛り上がっておりますよ。見ると、ローマ字で書かれた「マイ歌本」を持っていたりして吉田照美くらいやる気マンマンである。こういうコアな連中になってくると会話の合いの手を「マッタクソノトオリダ」なんて片言の日本語で言ったりするのがいじらしい。さぁ、いよいよ開場である。入ってみると広間の前方にダンスフロアが出現していて、スタンドマイクが一本立っている。その後ろにはプロジェクター。なるほど、モニターがないのでここに映すと。程なくスタッフからシステムの説明が。それによると、前方に曲のリストがあるから、そこから好きな曲を選んで申請しろという。たちまちその一角に人だかりが。程なく「私のたまごやき」が流れ始めましたよ。が、カラオケじゃないんですわ。普通に歌が入っているのね。群集は手に手にローマ字の歌詞の書かれた紙切れを手にしていますよ。そして全員1本のマイクの周りを囲んで歌いだしましたね。しかもなんかちゃんと歌えてないし。あ〜あ〜、マイクの奪い合いですか。その後もそんな調子で宴は続く。時折、プロジェクターに映るのは普通のテレビやビデオの同録から抜き出したオープニングやエンディングの絵。その下にローマ字と英文の「二ヶ国語」の字幕で歌詞が出るので、それを見ながら大熱傷。当然普通の同録なのでオリジナルの歌は入ったままだが、そんなことはお構いなし。大盛り上がりですよ。檄帝(それも何故か「3」の中で出てきたやつね)が流れますと、日本語の流暢なねーちゃんがいて、ちゃんと台詞を入れましたよ。ここで宴は最高潮に達したわけで、時刻は既に真夜中になろうとしておりました。

しかしね〜、これは何というかかつての街頭テレビに相通ずる光景ですわ。日本人から見ると笑ってしまうくらい原始的というか、カラオケとさえ呼べないものなのだが、それを嬉々として楽しむ光景は見ものでした。わしらの環境は彼らから見ればきっと贅沢なんじゃろう。ただ、アニソンカラオケの定番、いさおや水木兄貴、ガンダムものがないのがさびしい。カラオケで、それもアニソンのみという日本国内の日常生活ではいささか危険なことをあえてするのなら、やはりこの辺の定番は入れておいてほしかった。

この後もほとんどオールナイトで主に映画の上映があるのだが、「サクラ大戦活動写真」だの「パトレイバーWXIII」だの全部見たヤツの上に個人的につまらなかったものばかりなので撤収。

その夜、宿に帰り、床に入って、寝入ってからしばらく経ったころ、外から「ジリーンジリーン」と電話のような目覚ましのようなけたたましい音が。時刻を見てみると朝4時半ですよ。どうも誰かが玄関の呼び鈴を鳴らしているらしい。宿はホテルとB&Bの中間のようなところで、自分の部屋は玄関の正面の、階段を上がったところにあるので恐ろしくでかい音で聞こえてくる。時刻から察するに、最後の映画を見終えて帰ってきた奴が締め出しを食らったようだ。この宿、玄関を入るのに暗証番号を入れなければならず、その番号は部屋の鍵のキーホルダーに書いてある。そのため、「外へ出るときは必ず鍵を持っていってください」という注意書きがいたるところに書いてある。しかも夜12時を過ぎるとフロントがしまるので、鍵を忘れた挙句この時間以降に戻ってくると締め出されてしまうのだ。外から話し声がするところからするとどうやら一人ではないようだ。10分ほど経っても呼び鈴がやむ気配はない。いい加減あえて日本語で
うるせーぞゴルァ!今何時だと思ってるんだこのぉ!
とか怒鳴ってやろうかと思ったころ、ようやっと諦めたらしく、呼び鈴は静まった。その後、しばらく寝たと思ったら、また呼び鈴が。今度は朝6時を過ぎていた。すると、外から鍵が開く音が。誰かが鍵を持っていたらしい。大声で話しながら外の階段をドスドス上がっていく音。もうね―、刺してやりたかったですわ。どこへ行っても社会常識のない奴はいるのね。

翌日、最終日は「攻殻機動隊 Stand alone complex」のほかは特に見るものもないのだが、せっかくなので閉会式まで残ることに。「攻殻」はえらいよく出来ていた。こりゃ映画より面白そうである。もっともこれも2話しか見なかったので、その後どうなったかは不明だが。暇つぶしに「ナコルル」だの「キディズグレイト」だのを見る。後者はなんかすごいことに。話が中途半端な上にロベリアが偽名で出ている。外見も声もしゃべり方も同じなのよね。んも―どうしましょうってな感じである。「まほろまてぃっく」とかも見たのだが、これも一体どうしたらいいやら。BS−iではこれを夜7時から堂々とやっているというのだからBSデジタルとは恐ろしいところである。今回ここに来た収穫は案外こういうところにあるのかもしれない。何しろこの手のものは普段は絶対に見ないうえに、BSデジタルでやっているものにいたっては物理的に見られないわけで、こんなことでもない限りまず見ることもなく終わるだろうと言うものを今回はたくさん見て、案の定げんなりした。まぁ、見聞は広がったと言うことで。

閉会式で、最近流行のミュージックビデオとアニメをあわせたネタのコンペがあった。気分を害される方もいることを承知であえて申し上げたい。こういうものは見かけより難しいのよ。たとえて言うなら小説を書いてみるようなもので、一見小説なんざ、書こうと思えば誰でも書ける。確かにそりゃそうで、或る程度のものなら誰でも出来ないこともない。もう随分前に作家だったか、何かの賞の選考委員だったかが言っていたが、小説の怖い所は、紙と鉛筆さえあれば書けてしまう、その一見簡単そうな見かけにある。絵と違って、ただ言葉を書くだけなら別に練習がいるわけでもないので、甘く考えている人間が多いと言う。どっかの専門学校のキャッチフレーズで「ヒットする小説の裏には必ず法則がある。それをうちでは教えたる」という意味のものがあった。その法則とやらにのっとって書けば、面白い話が書けるとでも言いたいのだろうが、よしんばそれが面白くても最終的には「それが何か?」という話になるだろう。このビデオの場合もそれは同じで、たいてい音楽のリズムと言うか、切れ目と言うか、そういうものといかに絵をマッチさせるかを第1条件としてやっている。、ここでもリズミカルな曲にロボットものなどで動きをあわせてみましたと言うのが非常に多かった。が、しかしである。どうもそういうのは面白くない。確かに音楽と絵がよくシンクロしてますよ。でもそれが何か?という感じがする。以前、アメリカのその筋の人が作ったミュージカルをベースにしたネタを見たことがある。これはすごかった。リズムであわせるというより、曲そのものに絵を合わせて作ってあるのではまり度合いが半端ではない。まるで最初からそういう劇伴だったかのような出来栄え。最後まで見て感動してしまった。ミュージックビデオっちうのはリズムと絵の変わり方があってりゃいいってもんじゃないと言う事を示してくれて感動の嵐である。さういふものをぜひ大西洋のこちら側でも見習っていただきたいものである。

最終的にここに来て感じたこと、それは

ここはまだ市場開発が十分ではない。

この一言に尽きるだろう。同じヨーロッパでも海峡の向こうでは既に市場開発が進んでいて、本屋に行けば普通に漫画コーナーがあり、立ち読みが群がっていたり、CD屋に行けばビデオやらDVDやらがどっさり置いてあったりする。この国でも、最初に来た10年ほど前はCD屋に行ってもアニメのアの字もなかったのだが、最近はちょっと大きいところに行くとDVDやビデオコーナーの一角に「マンガ」というセクションがあるようにはなった。だが、それでも他に比べれば微々たる物である。何しろ今この国で出ている全アニメDVDのリストがウェブに載っているくらいなのだから。情報という点においても未だにファン同士の草の根の交流が主であり、フランスのように自国で発行される専門誌など全くない。以前はアメリカから輸入されたものがあったが、最近はそれも見かけない。そこで、こういったコンベンションが新作が最初に人々の目に止まる場所となる。ここの人々が肝心のネタそのものをどうやって仕入れているのかというと、ファイル交換が主である。アメリカでは既にものすごい量の作品がDVDになっており、新作もどんどん出ている。向こうでそういったものから抜き取られてウェブに上げられたものをこっちの人々が落としてきてみる。そんなわけで、一般の人民にはあまり新作にアクセスする方法がないにもかかわらず、一部のコアな連中だけが限られた量であるとはいえども、タダで新作を見ているという状況がある。ただ、こういった人々が金を払いたくないのかというと、必ずしもそういうわけではなく、単純にものがないというのが理由の大きな部分のようである。とはいえ、本当に金に糸目をつけないのであれば、マルチリージョンのプレーヤー(5万円相当もあれば買える)を買って、アメリカから大量に買い付けるという方法を取ればいいわけではあるが。ただ、今出回っているソフトの値段を見ると、日本のように他のジャンルに比べて異様に高いと言うこともなく、映画や音楽など他のジャンルとそう大差はない。因みに1本当たりの平均価格は15ポンド(約3000円)程度、高くても25ポンドどまりである。従って、この値段で、アメリカ並みのソフト供給をすればそれなりの脈はあるだろう。もっとも、それ以前に社会一般におけるアニメの位置をもう少し確立する必要があるのは事実だが。

なんか最後のほうはよくわからない話になってしまい慙愧の至りです。コンベンションの内容に関しては西の海に流しまして、次回はこのときにもらったプログラムに書いてある面白コラムにいろいろ突っ込んでみようかと思います。それではまた、来週の「西洋のヲタクちゃんの苦悩について考える」のこころまでぇ〜っ。

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