未来の首都ちんたら旅

〜名古屋と万博、足にまめが出来るまで歩いてみました。

<一日目>

未来の首都といえばどこか。

勿論名古屋な訳で。
つボイノリオの名曲『名古屋はええよ!やっとかめ』で歌われている未来の首都、名古屋。
あの歌が出た頃から小牧は国際空港だったわけですが、それも今はセントレアに移った、そんな発展も著しい名古屋。
声を大にして言いたいんでありますが、決して名古屋をバカにしているわけじゃないんですよ。あの半ば自虐的な唄われ方をされている、東京と大阪にはさまれた文化圏、それは一体どんな所なのか。昨今「国内で最も元気のある地域」なぞと言われる名古屋ってのは一体どんなところなのか。この目で確かめたい。そんな至極真摯な気持ちなんでございますよ。
今回はそんな名古屋と、愛・地球博の目玉の一つ、「サツキとメイの家」を3泊4日(うち車中泊2)で訪れた際のご報告なんでありますが。

とりあえず万博の入場券は買い求めた上で、だめもとで「サツキとメイの家」(以下「家」)観覧希望葉書を7月1日分から31日分まで1枚ずつ絨毯爆撃的に送りつけ、どうせダメだろうと思いつつ待つ事しばし。或る日1通の封書が届いた。当選。まぁ入場券を買っちまった以上、いずれにせよ万博には行く予定だったんですが、やはりこれを見られるってのは嬉しい話ですよ。そんな喜びに打ち震えるうちに出発の日は来まして、7月某日、日付が変わる直前の新宿駅新南口高速バスターミナルから、いよいよ旅の始まりです。

以前、高速バスで神戸まで行ったとき、数時間に1回休憩に止まる度に明かりがついて、そのたびにようやっとウトウトしかけていたのを起こされ、殆ど一睡も出来なかったので、今回は以前渡英した際にもらってきたヴァージンアトランティック航空謹製アイマスクと耳栓、さらにはのどの具合がいささかよくなかったので、マスクも持参してまさに完全武装、なんとか車内で眠る事を目指します。席に着きますとまずアイマスク及びマスクを蒸着、消灯までは耳栓型イヤホンを装着したMDウォークマンを聞きつつ外界からの刺激を完全遮断、消灯後は耳栓に装備を変更して到着まで熟睡という完全無欠の計画。首から上の穴という穴をふさぐこの計画なら間違いなく眠れるに違いない。まさにパーペキだな。ああ。


……
………

眠れません。非常に眠いんですが、なぜか眠れません。飛行機のエコノミークラスよりはるかに条件はいいんですが、なぜか眠れない。もう悟りました。あっしは乗り物の中では本当に疲れて意識を失わない限り眠れないんだ、そうなんだ。寝ているような起きているような、よく分からん状態のまま、サービスエリアに3回ほど止まった覚えがあります。その後、一応眠ったらしく、再び目が覚めると高速を降りようとしているらしいところでした。あの夜行高速バスってのは、出てから着くまで基本的にカーテンを閉めたままなんで、今どういう状態なのかが分からない分揺れやエンジン音が妙に気になっていかん。出発後、首都高を通っている間はカーブが続く。それがなくなって直線が続くようになると、そろそろ中央道が近いななんてことを考える。さらにしばらくすると登りが続くようになりエンジン音が騒がしくなって、ああこりゃそろそろ山だなとか、この長いトンネルは多分小仏トンネルだな、っちゅうことはぼちぼち山梨だなとか、減速しながら急カーブを走っていると、これは高速を降りるところだなとか、じゃあ次は料金所を通って下道に出るな、恐らくその前に一時停止するだろうから、それがあればこの想像は間違っていないなとか、えらい揺れるけれど一体どんな田舎道なんじゃとか、もうあれこれあれこれ考えちまう。これが飛行機ならどこを飛んでいようが巡航中なら大した変化もなく、窓の外を見たところで大抵何が見えるでもないので、大人しく寝る気になるんですが、どうもバスはいかんよ。特に視覚が遮断されると妄想力が高まる人間には毒だ。一般的な事柄として、次の法則を提示したい。

ラジオドラマが好きな人は夜行高速バスで眠るのは難しいと思われる。

結局寝たような寝ないような7時間を過ごした後、名古屋駅着。朝7時。
まず食事を、と思ったものの、今すぐ食った所で本日の目的地、明治村開園時間までまだ2時間半ある。名鉄名古屋出発予定時刻まででさえ、まだ1時間半以上。とりあえず名古屋駅周辺をぶらり。

最初に名鉄の駅の場所等を確認した後は、最初に目に止まったでかいビル(JRセントラルタワーズ)の反対側に延びる通りのほうへ何となく行ってみる。するとそこには何と

ユニモールが。

おお、ここがあのユニモールですか。
いや、あたしの名古屋に関する知識は正直な話あの歌がかなりの割合を占めてるんで。
とりあえずこのまま歩けば栄などのほうまで行けるんじゃないかと思ったんですが、何分正確な距離が分からんので断念。駅へ戻り、構内の店で朝食。ソフトドリンク飲み放題だっていうんで、ここぞとばかり冷たいものをがぶ飲み。新聞を読みつつ1時間粘る。

犬山行きの名鉄が名鉄名古屋から続くトンネルを出ると、そこは立つような雨でした。
予報だと日がな曇りだったはずが、酷い有様だ。犬山駅からバスに乗り、20分ばかり。小高い山を登っていよいよ到着。開園まで待つ事10分ばかり。ついに園内へ。が、雨はもうドラマの豪雨のシーンのごとく、それこそホースでまいているように降り注いでいる。一日こんなんではまともに見てられんのでは、と心配になりますが、何しろ今回の名古屋行きのメインイベントの一つがこの明治村を端から端まで見ることなんで、雨が降ろうが槍が降ろうが回るしかない。時折雨宿りしつつ鴎外・漱石の家、学習院長官舎などを見るうち、徐々に雨は小降りに。が、湿度がものすごい勢いで上昇、写真を撮るのもままならない。

そんな中でも諦めず撮りますよ。
ここは他の似たようなところ(江戸東京たてもの園、北海道開拓の村など)とは規模が桁違いでして、置いてあるものの数も、種類も比較にならない。建物の種類は民家、店舗、学校、病院、官公庁、工業施設、ホテルから刑務所、裁判所さらにはブラジルや米帝の移民住宅、教会、集会所などなど、多岐にわたります。
あるのは建物だけではなく、機関車と客車(ここに写っているのは明治7年製の機関車と明治41−45年製の客車)や、
京都の市電(明治43−44年製)といった乗り物が乗れる状態で保存されています。距離としては本当に短いので、移動のためというより乗ることそのものが目的です。

この市電、乗ってみるとんまー揺れの凄い事。カーブにかかるとそのまま乗り上がり脱線するんじゃないかというくらいゴリゴリいう音と強烈な振動が起ります。この写真を撮った段階で到着から小一時間ほど経っていましたが、この頃から急激に天候が回復し、見る間に雲が吹き払われて快晴に。気温の上昇と先ほどまでの雨で残った湿気があいまっておかしくなりそうな暑さ。
建物の中の状態はまちまちです。このように内部まで保存され、小物まで置いてあるところもあれば、中は空のところもある。
そして旧帝国ホテルの玄関部分。この部分だけでもなかなかの偉容なんですが、現役時代の写真を見るとその姿たるや大変なものです。中へ入りますと、酷く低い天井と吹き抜けの組み合わさったホールや、段違いになっている2階部分など、独特の空間設計が。1階部分は大きな窓が殆どないため採光があまりよくなく、いささか閉塞感があるのですが、恐らくその窓の少なさと壁の多さが、完成披露パーティー当日に起った大震災を耐え抜いた一つの要因なんでしょう。

建物のほかに食い物も当時のものがいくつか売られていまして、その中に『食道楽』のコロッケとカレーパンというのがある。この『食道楽』ってのは明治期の料理書でして、当時大層なベストセラーになったそうな。先輩でこの手の明治期の料理書を研究している人がいまして、この『食道楽』も噂には聞いており抜粋を見たりもしていたんで、はたしてどんなものなんだろうと思い、食ってみました。カレーは一口目はボンカレーのような、なんというか非常に平均的なカレーなんですが、食べているうちに徐々に辛くなってくる。そして何か鼻に抜けるような後味が。中身が何なのかわからんので、今度その先輩に会う事があれば聞いてみようと思うんですが、この後味が何とも特徴的です。まずくはない、むしろうまいんですが、何か変わった後味。いや、味というより香りといった方が適切か。まろやかなような、ちょっと刺激臭のような…。あれは一体何なんだろうか。コロッケの方は何種類かありまして、その中でも当時実際にもっとも評判がよかったのが現在「コロッケ」といった時に指すジャガイモのコロッケだったらしいんですが、そのほかにひき肉というのもある。これを食ってみたんですが、中身はひき肉といっても殆ど液状化した、クリーミーなものにトマトで軽く味をつけてある。要はクリームコロッケのクリームをトマト味にしてひき肉ベースにしたものとお考え下さい。外側は硬く、中がいささか粘り気のあるクリーミーなソースでなかなかうまい。これが当時のレシピどおりなら今食っているものは導入された当時からそうそう変わっていないのね。

明治村を出る頃には既に4時近くになっておりまして、さてこれからどうするか。夜は漫喫もしくはオケ屋の夜間パックないしはフリータイムを使って極限の安値で宿泊する予定なので、早くとも8時半か9時くらいまではうろついていなくてはならん。とりあえず名古屋中心部へ戻って未来の首都を心行くまで歩き回る事に。とりあえずは城を見ようかと思い行ってみますが、着いたのは5時過ぎで入場時間は既に終了。やむを得ず今日のところはあきらめて、とりあえず栄方面へ歩いていってみる事に。まずは東京が直下型大地震で壊滅したら国会議事堂になることでお馴染みの名古屋市役所などを横目にそれらしい方向へ。まぁしかしそれにしても何と道の広いことか。6・8車線は当たり前、2車線なんて幹線ではまず見ない。以前どこかで名古屋は全国で最も道路の整備された都市のひとつだと聞いた気がしますが。こりゃウソじゃない。いや、大したもんだ…なぞと歩く事30分。なんか徐々に中心部から遠ざかっているような気配が。何せ初めて来た場所の上にガイドブックを買うのが勿体無いと思い、ろくな地図を持たないで来たんでどうも地理感覚がおぼつかない。普段殆ど使わない携帯のGPS地図を見たところ、どうも90度違う方角に向かっていた模様。碁盤の目状の通りってのはこういう事があるので油断ならねぇ。

さんざん歩いた後、ようやっとテレビ塔が見えた頃には既に6時を回っていました。何かもう足がかなり危険な状態になりつつあります。なにしろ今朝8時過ぎに朝食をとってからというもの、今まで座ったのが犬山ー明治村間のバスの往復と、『食道楽』のコロッケが揚がるのを待つ10分ほど、犬山から名古屋までの数十分のあわせて1時間程度で、残りの7時間くらいは延々と歩くか、立っているかしているんで。

まぁそれでも、国内国外どこへ行こうとも高いところだけは絶対に上ることでお馴染みのあたくしですから、ちゃんとテレビ塔にも登りましたよ。平日の夕方、それも天気が怪しいということで、展望台には人っ子一人いない、貸し切り状態だったんですが、ガラス張りの展望台からさらに上にある屋外展望台へ出たところでとうとう雨が。風も強くなり当たると痛いくらい雨粒が吹き付けてくる。やむを得ず再び下へ退避。見ると市内中心部は一面暗雲が立ち込め、雨が降りしきっているんですが、ちょっとそこから離れると晴れている、その境界線がはっきり見て取れます。これはしばらくすれば止むに違いないということで、夕飯や宿泊先の検討を兼ねて展望台内部で休息。この段階で6時半。この後食事をとってから宿泊先へ行ったとしても、オケ屋の場合5時過ぎくらいに放り出されるので、宿泊先は漫喫にほぼ内定。夕食はここからそう遠くないビルの中にある「矢場とん」にて味噌カツをば食らう事に決定。とりあえず宿泊先探しを兼ねてうろついてから夕食にしようじゃないか。

そんなわけで、夕暮れの栄界隈をぶらり。
そこで見つけたのがサカエチカ。おお、これまたこれが噂のサカエチカですか。しっかし、東京以外のところに来るたびに思うんですけど、東京の地下街ってのは案外貧弱ですね。名古屋や大阪は言うに及ばず札幌でさえ中心部だけを見れば都内より地下街が発達している気が。っちゅうか、東京の場合駅と駅の間が地下街でつながっているってのがあまりない気が。そういう場合地下街ではなくて地下通路になっている事の方が多い。地下街ってのは八重洲にしろ渋谷にしろ池袋にしろ、どこかにつながるというより駅の延長という感じがする。役割が違うんじゃな。

なぞと思いつつうろつくうち、カラオケ館と、その上に漫喫のある所を発見。ここなら最初はオケ屋で寝て、オケ屋が閉まった後は上に行けばええじゃないか、禁断の一人カラオケしたってええじゃないか、ということで宿泊はここに決定。さて夜の帳も下りましてぼちぼち腹も減ってきた。いざ矢場とんへ。

普段あたくしは一人では酒を呑まないんですが、さすがにこの日はくたびれたんでちょいと一杯やりつつ、鉄板に乗った味噌カツをいただきました。いやぁ、ビールがうまいっすよ。ぶっちゃけた話、矢場とんは都内にもあるんですが、銀座まで出ないといけないってのと、名古屋に来て喰らう事に意義があるんでそこは突っ込まずに。肝心のお味の方は実にうまい。席の前に食い方のアドバイスが書いてありまして、その通りにやってみました。まず来たままの状態でいただく。うまいです。思ったほど甘くない。続いてからしをつけて。まぁいいんじゃないんですか。甘さがさらに抑えられます。次に白ゴマをかけて。これはうまい。ゴマと味噌ダレがよくあいます。最後に唐辛子。これはあまり変化なし。かけた量が少なかったのもあるでしょうが。結局一番うまいのはからしと白ゴマをかけたとき、と個人的には結論が出ました。これはちょっと癖になりそうです。

くたびれていたのと、すきっ腹で飲んだのが効いたらしく、ジョッキ一杯で結構ほろ酔い加減です。時刻は8時過ぎ。もうこれ以上歩けそうもないので宿泊先へ。入る前に今一度価格表とにらめっこしたところ、オケ屋で宿泊した場合と、最初から上の漫喫で10時間寝た場合の差は大して大きくない事が判明。なんかもう疲れてどうしようもないので、オケ屋で中途半端に寝るより、漫喫の寝椅子みたいになる席できちんと寝る事に。いやぁ、こういうとき日本の都会ってのは便利ですわ。シャワーを使い、テレビを見、漫画、雑誌を読み放題、飲み物飲み放題。挙句はゲームも出来る。で泊まれる。1泊くらいならホテルいらねーじゃん。ゲームが出来るとわかってりゃ、始めたばかりのゲームが丁度あったんで、それとマイメモリーカード持ってくればよかった、なぞとバカなことを考えつつ名古屋の夜は更けていきました。本当は旅の恥はかき捨てで、オケ屋に一人で入って『名古屋はええよ! やっとかめ』を唄うという野望が無きにしもあらずだったんですが、さすがに体力及び気力が限界でした。さあ、明日はいよいよメインイベントです。

一日目は殆ど明治村だけで終始しました。明日はいよいよメインイベント、愛・地球博とトヨタ博物館を訪ねます。果たして鬼が出るか仏が出るか、明日の『未来の首都 ちんたら旅』後半のこころまでぇ〜っ。

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